オリンピックの金メダリスト、スポーツの国際大会等で優勝した人が、皆口をそろえたように言う言葉がある。
「今の気持ちを教えてください」というインタビュアーの質問に対して「両親やコーチ・支えてくださった方々、皆さんに対して感謝の気持ちでいっぱいです」と言うのだ。
オリンピックや国際大会で優勝するほどであるから、技術的には超一流の域に達している選手達だ。その彼らが一様に「感謝の気持ち」を述べるということは、言わされている訳ではなく、本心からそう思っていると捉えて良いだろうと思う。
ここで考えたいのは、次のことである。
一流の選手になったから、感謝の気持ちを持つようになったのだろうか?
故野村克也氏(選手の再生屋といわれたプロ野球の名監督・名指導者)は、次のように言っている。
「どんなに、先天的に素晴らしいな才能・技術を持っていても、人間的に育っていない人はその才能を開花させ、持続させることはできない。最終的には人間性が大事だ」と。
心が育ち、人に感謝する気持ちを持っている人は、指導者や他人のアドバイス・指導を素直に受け止め、自分なりに咀嚼して自らの血となり、肉となるよう努力をするのだろう。
勿論、誰の言うことでも素直に受け止めろということではない。「心の育った人」はそれなりの意見や理論・理屈を持った人をキチンと適正に評価する目も持っている。
逆に心の育っていない人は、自分が一番だと思い、他人を見下すか無視するかで折角の適切なアドバイス・指導も受け入れなくなってしまうのだろう。
一流の人材が、指導者や周囲の人々に感謝の心を持つというのは、今の自分があるのは自分だけの力でここまで来られたのではない、他人の助けや協力、恵まれた周りの環境があってこそ自分が成長し成功してきたことをよく知っているからだ。
私自身が自分の人生を鑑みて反省するのは、生まれてからこの方、いろんな方々のお世話になり、チャンスをいただいたにもかかわらず、それを十分活かすことができなかったということは、感謝の気持ちが足りなかったのではないか、自分は素直に先輩たちや周りの方々の教えを受け止めてこなかったのではないか、ということである。
自分一人で経験できることは限られているが、「自分以外は皆、師」という言葉に従って他人の経験を自分の糧・肥やしにできる人は、度量の大きな人であろう。しかし「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というように、自分の経験以外にも有用な事象は世の中にたくさんあるということを心したい。
「我以外皆我師」との想いで、自分の周りの方々に感謝の気持ちを持ち、日々過ごしていく中で、自分を磨いて成長し、成功への道に近づくのではないだろうか。
株式会社CSDコンサルタンツ
代表取締役 西里 喜明
Comments