新しい時代の経営の方向性として、人材の流動化を前提とした組織づくりの在り方がよく議論される。
確かに、従来の一括採用~全社員終身雇用というスタイルは、企業風土に合わない人材の場合、企業にとっては社風に合わない人材を定年まで抱え続け、新陳代謝を阻害し、社員自身にとっても自分の人生を長年犠牲にすることになる、というデメリットを唱える論もある。(大手企業はその面が大きいかもわからないが、中小企業の場合、そもそも一括採用するにしても人数が限られてしまい、中途採用でしのいでいる企業が多いのではないだろうか?)
しかしながら、「企業は人なり」という考え方に立つと、自社の社風に合う人材を確保し、自社の社風をさらに進化させる人材を終身雇用することは決してマイナスではないはずである。
要はその会社にしか役に立たない(他社では通用しない)人材をつくってしまう社風が問題なのである。それは当該社の人材育成方針、社風形成風土に問題があるのであって、その人材に問題があるのではないと思う。
採用面談で「人となり」が十分に評価できるということはそうあるものではない。採用して数か月、あるいは1~2年経たないと、自社にとって有能な人材かどうか評価しづらいというケースも多いだろう。
「企業は人なり」という格言の真意を理解するならば、優れた社風を創ること、社風に合った人材を育成することも会社の責任ではないだろうか。
人材流動化という風潮をうのみにして、有能な人材確保だけに目が行ってしまい、自社で有能な人材を育成するという社風がなくなってしまうと、結局は借り物の人材で企業経営をしなければならなくなる。
それは企業にとって真のイノベーション起こす難儀をしなくなる可能性に繫がる。(あるプロ野球球団は、その球団内で選手育成ができず、トレードに頼ってしまっているケースが目につく。企業がそうなってしまっては成長がおぼつかない。)
自社に職業人生をかけるぐらいの情熱を持った社員を終身雇用し、常に影響を与え続けられるような人材を育成することが企業経営にとって重要な事ではないだろうか。またそういう企業にならなければいけないのではないだろか。
その意味において、採用した全ての社員の終身雇用を前提にした大手の人事制度ではなく、自社の社風に合い、さらに新しい優れた社風をつくっていく人材育成をベースとした終身雇用制は必要ではないかと思う。特に、常に人材確保に悩まされている中小企業の場合は必要な人材の終身雇用制を打ち出し、社員の安定確保、企業の成長、社員の幸せを追求する理念が必要ではないかと強く感じる。
株式会社CSDコンサルタンツ
代表取締役 西里 喜明
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